クレーム対応以上に、企業の評判を左右するものはない。カスタマーサービスは
ブランド・ロイヤリティー (優良顧客の獲得) を構築する上で重要な役割を担っている。
実際にNordstrom (アメリカの大型チェーンデパート) やZappos (アメリカのアパレル通販サイト) といったブランドの成功は、カスタマーサービスを中心に据えたビジネスモデルがあってこそ成し得たものである。21世紀の今、インターネットやソーシャルメディアの普及により、消費者が気軽に情報を発信できるようになった。その中で企業が顧客により良いサービスを提供するためには、優れたカスタマーサービスの提供が重要である。
カスタマーの否定的な”つぶやき”にも誠実に対応するBritish Airways

画像元 : http://simpliflying.com/2013/three-ways-airline-marketing-changed-promoted-tweet-british-airways/
消費者による意思表示が今まで以上に簡単になったため、クレーマーへの対応が企業のイメージを決定づけるといっても過言ではない。ではどのように対応すれば、顧客と企業の両者が納得する結果を得られるのだろうか。また、クレーマーをあなたのビジネスを改善させる「財産」に変え、ピンチをチャンスにすることはできるだろうか。
答えはもちろん、Yesだ。企業への苦情は有力な宣伝や口コミ元となり得る上に、ステルスマーケティング (ステマ) となる可能性を秘めている。それでは早速、クレーマーを貴重な財産に変える5つの方法を紹介しよう。
1. お客様の痛みに共感する
苦情の内容は似ていることが多い。クレームは、製品が動かない、スケジュール通りに修理されない、期待に沿わないなど、起こるはずの事が起きなかった時に生まれる。いずれの場合でも、クライアントがとても困っているということに変わりはない。そして苦情を報告している時点で、彼らは間違いなく怒っている。
その場合、早く問題を収束させようとすればするほど、顧客の怒りのボルテージをさらに上げてしまうことがある。顧客が会社または製品に不満や怒りがある時は、感情が高ぶっていることが多いため、焦りは逆効果となってしまう。あなたが最初にすべきことは、彼らの置かれた状況に共感し、理解を示すことである。
クレーマーは、問題自体の解決よりも「自分の置かれた状況は理解されたのか」を気にすることが多い。そのような状況ですぐさま問題解決に走ってしまうと、顧客は「自分の不満を真摯に受け取ってもらえていない」と感じてしまう。
私たちは皆、特別に扱われることを望んでいる。だからこそ、多少時間がかかってしまっても「自分の声に耳を傾けてくれている」と顧客に感じさせることが重要なのだ。そのためには彼らの意見に共感するだけではなく、問題そのものの状況を把握しておく必要がある。「注文した商品と別のものを渡されるのは、さぞ不愉快なことだったでしょうね。」といった具合にだ。
電話やソーシャルメディアを通じて送られてくる苦情は共通して大きな問題である。そしてこれらのクレームに対して、はじめの段階でどれだけ上手く対処できたかで、問題を解決できるか否かが決まるのだ。
誰だって、自分の製品やサービスを批判されたら嫌な気分になるだろう。しかし、クレームは貴重な財産であり、それは怒った顧客を熱烈なファンに変える絶好のチャンスである。
クレーマーほど率直に正直な意見を言う人はいない。これらのクレームを解決することは、自社のサービスに問題がないかを見つめ直す貴重な機会にもなる。そのため、苦情を対処しているときは細かくメモを取るようにしよう。
ドミノピザは「ダンボールのようだ」といったクレームに真摯に向き合い、ビザの品質向上に努めた
顧客の声をよく聞いた例として、Dominos (ドミノピザ) を紹介しよう。
Dominosはダンボールのような味だと多くの人に揶揄され、しばしばジョークの的となっていた。 2009年にBrand Keys社によって行われた消費者アンケートでは、Chuck E. Cheese社と並んで最下位にランク付けされてしまった。
Facebookでも話題となったDominosのカスタマー対応
そこで彼らは顧客の不満や苦情に耳を傾け、ピザのレシピを変更した。さらに、彼らは消費者だけでなく、グルメブロガーにまで新しいピザを試すように働きかけ、ソーシャルメディアを通じてフィードバックをもらうようにしたのだ。批評を積極的に受け入れ、真摯に対応する彼らの姿勢に、多くの消費者が好感を抱いた。
Dominosが製作したドキュメンタリーの中で、CEOの Patrick Doyle氏は以下のように述べている。 「批判的なコメントで落ち込む人もいれば、より美味しいビザを作れると興奮する人もいる。私たちは後者だった。」
2. クレーマーをとにかく喜ばせる
数あるトラブルの中でも特に解決が難しいものがある。 引っ越し会社が高価なアンティーク品を落としてしまった、仕入れ先が期限を守らなかった、ケーブル会社が今年一番の試合を放映できなかったなど、自分自身だけでは問題を解決することはができない場合が多々ある。しかし、そのような場合でも常にクレーマーの不満を解消する方法を探してみよう。それによって、クレーマーを積極的に意見を言ってくれる支持者に変えられるかもしれない。
顧客のニーズに応えようと様々な努力を重ねることで、顧客は「尊重されている」と感じることができる。できる限り、彼らが求めている以上のことをしてあげよう。期待以上のサービスを提供することで、彼らはまるで自分が最も大切なお客様であるかのように感じることができる。
Amazonの例を紹介しよう。
Amazonで注文したクリスマスプレゼントが、配達されたアパート内で盗まれたことがあった。そこで彼らはすぐさま同じ商品を再送し、郵送代金も負担した。盗難自体はAmazonのせいではなかったにもかかわらず、顧客の期待していた以上のサービスを行った。
彼らのこの対応は多くのニュース番組で取り上げられ、Amazonは支払ったコスト以上の評判とポジティブな企業イメージを手に入れた。
クレーマーから「大切なお客様」へと変わった顧客の再来店率は高くなる。消費者はみな、商品の欠陥や従業員の失敗やトラブルが起きてしまうことは理解している。大切なのは、そういったトラブルにどのように対処するかなのだ。うまく問題を解決できれば、その企業は他社との差別化を図ることができる。どんな問題でもうまく対処してくれると顧客が感じれば、彼らは何度でもあなたのもとへ戻ってくるだろう。
3. 対応には心底気をつける
インターネットやソーシャルメディアが普及する前は、1人の不満は、周りの10人に知れ渡るにすぎなかった。
今では、ネットの普及によりたった1人のクレームが何千人にも伝染してしまう。残念なことに、否定的なコメントは、肯定的なものより拡散する。クレームを軽視し、不誠実に対応したために事態を悪化させる例が多くある。
Lululemon (ヨガウェア専門のファッションブランド) の例をみてみよう。スタイルとフィット感に関する問い合わせに対し、LululemonのCEOは「あなたが単に太りすぎなだけだ」と返答した。この対応は、様々なメディアで物議を醸す結果となった。
Lululemon社創設者の失言は瞬く間にネットで広まった
批判的なコメントはすぐさまオンライン上で拡散され、鳴り止むことはなかった。
これこそが、クレームに対して誠実に対応しなければならない理由である。
まともに対処されなかった苦情はどんどんエスカレートする。それらがソーシャルメディア上で拡散されれば、さらに多くのクレーマーを生んでしまう。またそんなサービスを非難する声が、潜在顧客にまで届いてしまうことも考えられる。それを避けるためにも、優れたカスタマーサービスを提供し、ブランドイメージを守ることが大切である。
4. 顧客の口コミ心理をかきたてる
不満をもっていたクレーマーを満足させることができれば、彼らが熱烈なファンになる可能性は高い。
彼らは全く問題が起きなかったときよりも、問題が生じた後の誠実な対応を受けたときに、大きい満足感を得る。さらに嬉しいことに、完璧なカスタマーサービスを受けたとき、彼らはそれを周りに拡散させる傾向がある。
Nordstrom (アメリカの大型チェーンデパート) は、返品受け入れ時の対応で、高サービスの評判を確立した。彼らの返品に対する対応には定評がある。自社の製品ではないタイヤセットの返品にも応じた、という逸話まである。こういったストーリーが瞬く間に広がり、Nordstromはトップブランドとしての地位を確立した。
質の高いカスタマーサービスでは、Zappos (アメリカのアパレル通販サイト) も有名だ。顧客の声を深くとらえ、質の高いサービスを重要視してきたことで、評判を上げてきた。Zapposには好意的な口コミを積極的に広めてくれる忠誠心の高い顧客がたくさんいる。彼らのサービスを利用した顧客のなんと75%がリピーターになるというから驚きだ。
Zapposの欠陥品クレームに対するユニークなメールの返信
問題が解決され、期待以上のサービスを受けたとき、消費者はみな会社が自分のために尽くしてくれたことを、言葉にして広めたいと思っている。こういった顧客の肯定的なフィードバックがソーシャルメディア上で投稿されれば、企業はそれをシェアすることができる。ブランドイメージを向上させる上で、ポジティブな顧客の「本物」の声ほど有効なものはない。もし怒りに満ちている顧客から連絡がきたら、「チャンスだ!」とポジティブに捉えるべきである。
5. クレーム1つ1つに向き合う
クレーマーを満足させれば終わりという訳ではない。顧客のフィードバックをしっかり還元できているだろうか?クレームは、サービスについての最も率直な意見であり、会社の財産である。また、ビジネスをよりよくするための答えでもある。そして、潜んでいる問題を指摘してくれる。
「火の無い所に煙は立たぬ」 ということわざにもあるように、1人の顧客が問題を指摘してきたら、同じような問題を抱えている顧客が他にもたくさんいることを意識するべきである。
1つ1つの苦情にきちんと向き合うことで、今後の問題を未然に防ぐことができるし、それが組織的な問題であれば、悪化する前に対応することができる。特によく寄せられる苦情というのは、サービスのどこに問題があり、より良いサービスを継続的に生むために何が必要なのかを教えてくれる。つまり、苦情を消化してきちんとビジネスに役立てることで、より顧客に寄り添うことができる。
ほとんどの顧客は、人為的なものにしろシステム上のものにしろ、トラブルが起きてしまうことに理解がある。そのため、実際にトラブルが起きた際にどのような対応をするかで他社との差がつく。誰でも簡単にフィードバックを共有できるようになった今、苦情への対応の仕方が評判を決定づけるといっても過言ではない。
親身にクレーマーに耳を傾けることは、最大限の成果をあげることにつながる。言うなれば、批評に向き合うことは、ビジネスを成長させるチャンスなのである。この記事を読んだあなたはすでに、苦情からブランドイメージを守る方法も、クレーマーを誠実なファンに変えてしまう方法も知っている。次回クレーマーがあなたのもとにやってきたら、 「お問い合わせありがとうございます。」と心から言えることだろう。
原文:5 Ways to Turn Your Unhappy Customer into a Valuable Resource
著者:Josh Brown, Soldsie社のマーケティングチームの一員。 FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアを通じて販売するプラットフォームを作成している。Soldsie社のTwitterアカウント, Facebookアカウント