Webサービスの外国人経営者から見た、東京とシリコンバレーの違い

私は13年前にオーストラリアから武道を勉強するために来日し、4年前に国内向け請求管理SaaSの提供を開始しました。今年の夏には、AngelList(エンジェルリスト)を通して75万ドルの融資を受け、その関係者と会うため先日サンフランシスコに行ってきました。
目的は主に二つです。

  1. 出資してくれた投資家に会いにいくこと (ほとんど個人的に面識がありませんでした)
  2. シリコンバレーのスタートアップシーンに触れること

この滞在を通して、私はシリコンバレーと東京の違いを多く見つけました。

セレンディピティ (偶然が成功を引き寄せる力)

到着初日、借りているアパート (AirBnB) にスーツケースを置いてすぐ、私は散歩に出かけました。出かけてわずか数分後、今までお会いしたことのなかったMakeLeaps投資家の方に偶然会いました。

この経験から、投資家のみならず、社員、カスタマー、パートナー、エンジニアとの偶然の出会いが日常的に起きるということが容易に想像できます。シリコンバレーで感じるセレンディピティ (偶然が成功を引き寄せる力) は、まさに開いた口も塞がらないというレベルです。

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人々

サンフランシスコにいる人と接していると、意識の高さと知識レベルの差を実感します。彼らのように優れた能力を持つ人々に囲まれることで学ぶことが多く、非常に強い刺激になります。

では、彼らの原点はどこにあるのか。私は「楽観主義」にあると思います。ここにいる経営者はアイデアやその発案者、そしてスタートアップが「果たして成功するのか」を考えるのではなく「どうしたら成功するのか」を考えています。

日本とは異なり、スタートアップ企業を立ち上げることにマイナス要素は全く存在しません。これこそがシリコンバレーの楽観主義とエネルギーの源であり、私がとてつもなく魅かれる理由なのです。

さらに、シリコンバレーの人たちは助けの手を差しのべたり、お互いを紹介することにとても寛容です。一方、日本では誰かに紹介してもらうときは、まず自分のことをよく知ってもらう必要があります。日本のビジネスの慣習として、紹介することも、されることも信頼や人間関係に大きな影響を与えます。

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(KISSmetricsCrazy Eggの創設者、またMakeLeaps投資者のHiten Shahさんと共に)

メリトクラシー(実力主義社会)

有名なフレーズに「インターネット上では、あなたが犬であろうと誰も分からない」(1993年の米マンガに基づいたもの)という言葉がありますが、web上で自分の正体を隠すことはとても簡単です。つまり、画面の向こう側がどんな見た目の人で、何歳であっても(極端な話、それが犬だとしても)誰もそれを分からないし、気にすることはないのです。シリコンバレーでは、あなたが自分の実力を使って何かしらの価値を生み出している限り、あなたの年齢や社会的地位に関係なく、沢山の人が手を差し伸べてくれるでしょう。

年功序列を基盤におく企業がまだ多い国に比べると、シリコンバレーのこうしたダーウィニズム的メリトクラシー (実力主義) はとても魅力的です。

投資家

500 StartupsのDave McClure さんは以下のように述べています。※500 Startups はMakeLeapsの投資者です。

“Angel investors are the limiting factor to any startup ecosystem.”

「エンジェル投資家はスタートアップシーンに必要不可欠な存在である」

このように言われるのは、スタートアップしたばかりの企業が、エンジェル投資家の提供する資本、助言、人脈を、必要としているからです。

シリコンバレーはエンジェル投資家にとっての聖地と言われています。しかし残念ながら、東京ではシリコンバレーほどエンジェル投資家を日常的に見かけることはありません。MakeLeapsに出資してくれた木村忠昭さんなど数名を除きますが。

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起業家を尊重

シリコンバレーでは、起業家たちがとても尊敬されています。莫大な資本を抱えるVCが多く存在するため、トップ起業家はVCを選ぶことができます。VCはブログやソーシャルメディア、ブランドイメージ、そして何より起業家を尊重することで他のVCとの差別化を図っています。

日本ではどちらかと言うと、投資家に対して敬意が払われます。これは投資家が資本を握っているからでしょう。こういった傾向があるため、起業家がぞっとするような投資家のエピソードも聞くこともあります。

しかし幸いなことに、このトレンドは変わりはじめています。AngelListのような革新的な企業に導かれ、起業家と投資家の関係はよりフラットになっています。起業家は投資家に対してより多くの情報を共有するようになり、起業家を尊重しない投資家は相手にされなくなっています。

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その他の違い

UBER (アプリでタクシーを呼ぶサービス)

シリコンバレーでは「UBER」(ウーバー) がよく使われています。一度利用してみると人気な理由がわかります。通常のタクシーと異なり、ウーバーは車内が清潔で良いにおいですし、運転手も親しみやすく親切です。

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Yelp (口コミサイト)

東京でいう「ぐるなび」や「食べログ」のように、シリコンバレーでは多くの人が「Yelp」(イェルプ) を使ってカフェやレストランを探します。

アプリの使いやすさ

東京にいると、海外アプリが思うように動作しないケースが多くあります。日本で利用されることを念頭において設計されていないからでしょう。PassbookやGoogle Mapsをよく使う私にとって、アプリが完璧に機能することは嬉しい驚きであり、非常に便利でした。

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広告

サンフランシスコではスタートアップの広告があちこちで目にします。クリエイティブで面白みに溢れ、不思議とパワーをもらいます。日本では大企業や有名ブランドの広告ばかりが使われるので、この点も大きな違いです。

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スタンディング・デスク

ほとんどのオフィスにスタンディング・デスクがあります。作業時間の半分を立ちながら、半分を座りながらという人も多いようです。

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遊び心

日本人が少し真面目すぎる面がある一方、アメリカは遊び心に溢れています。”Mo-vember” (モーベンバー:「ひげ」を意味するスラング「Mo」と11月「November」を合わせてできた造語) といって11月になると一斉に男性が髭を生やし始めたり、最近では日本でも流行ってきましたが、ハロウィーンの時期には面白い装飾が至る所で見受けられました。

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思いつきの行動

日本では、前もってスケジュールを決めることが習慣でありマナーですが、サンフランシスコでは、夕食の約束やイベントへの参加をその場でぱっと決めることが多いです。

スタートアップマニア

シリコンバレーでカフェに立ち寄れば、至るところにスタートアップを語る人やアプリ制作をしている人などに出会えます。例えば、私が通りかかったコワーキングスペース (アマゾン社運営) では、無料のWifi、コーヒー、電源、ビール (…!?) 、食べ物まで置いてあり、シリコンバレーの環境、設備の良さを物語っています。

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電気バス

街には道路の真上に電線が吊るされ、電力バスが走っています。最新テクノロジーに囲まれた都市の真ん中に、張り巡らされたワイヤーをつたって走る昔ながらのバスが存在することと、実際にそれが機能していることに驚きました。

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犬を連れてる人がたくさんいました。犬好きの私には嬉しい限りでした。

服装

東京ではスーツを着るのが当たり前ですが、シリコンバレーではカジュアルが一般的です。もしスーツを着て歩いていると、「いまいちよく分かっていない奴」というレッテルを貼られてしまうでしょう。

会話

アメリカ人は考えていることをそのまま言葉にすることに抵抗がありません。私も近くに居るというだけでよく会話に巻き込まれました。これも、思慮深く、慎重で、見知らぬ人に意見を言いづらい日本人とは、異なる点でしょう。

人との交流

サンフランシスコに行って、まず私が考えていたことはとにかく沢山のイベントに参加して、多くの人と交流することでした。しかし、沢山の人にそれはあまり勧められないと言われました。シリコンバレーでは、個人的に直接紹介してもらうことが、質の高い人脈を得る近道なのです。

名刺

初対面の人に名刺を渡そうとすると、驚かれてしまい、最初の数回で名刺が時代遅れなツールだということがわかりました。シリコンバレーではメールやFacebook、LinkedInといったツールを名刺代わりにして、コンタクトをとっています。

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日本

「日本は保守的であり、変化を実現できない国である」という考えは誤った解釈です。

シリコンバレーの多くの企業が日本市場を潜在的な事業拡大の場として意識し始めています。アメリカで有名なベンチャーが日本への事業展開を検討しており、既にオフィスを構えています。

日本が世界のGDPの15%を占めているという点からも、日本には豊かな消費者と企業が存在していることが明らかです。

日本の市場価値を分かりやすく説明しているTim Romero氏の「崩壊する日本」というポッドキャストを皆さんにぜひお勧めしたいです。短いですが、日本が誇る優れた潜在能力について、興味深い歴史的事実を踏まえて語っています。

なぜ日本がスタートアップに最適な場所なのか?

最後に、なぜ今日本でスタートアップをするのが最適なのかを述べたいと思います。

・何より街全体がとてもきれいで、安全で、住むには最高の場所です。

・基本的に全てがお手頃です。日本の物価は高いというイメージは間違っています  (特にシドニーなどと比べて) 。

・カフェやレストランなど飲食店の質が素晴らしいです。優れたレストランが至る所にあり、新しいお店が常にオープンしています。

・日本はシリコンバレーに比べて競争率が低い国です。シリコンバレーでは、たとえ機会を得られたとしても、10以上ものスタートアップが豊富な資金を抱え、フルスピードで追いかけてきます。

・クラウドサービスに対する不安要素が少しずつ少なくなっているので、日本企業も驚くべきスピードでクラウド移行を進めています。

・日本での資金の燃焼率は比較的低いです。サンフランシスコの家賃は高く、人件費も最も高くつく場所と言えます。

・日本人は仕事への集中力が高く、かつ誠実です。シリコンバレーでは、人々が仕事に対してもっとリラックスした気持ちで臨んでいる印象を受けました。

・日本はスタートアップに対して少しずつオープンになってきています。新しいファンドが立ち上がり、常にコワーキングスペースなど起業家やフリーランスを支援する施設が増えています。日本でも、スタートアップを立ち上げることが社会の一般常識になる日も遠くないかもしれません。

あとがき

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。少しでもこの記事がお役に立てば嬉しいです。BtoB向けSaaSを開発・販売する会社の経営者として時々Tweetもしているので、@jasonwinder フォローよろしくお願いします。

Jay Winder

Jay Winderはオーストラリア人のMakeLeaps共同設立者です。武道を学ぶため2001年に来日し、2003年にWebnetITというITコンサルティングのビジネスを立ち上げ、2010年には”日本国内のフリーランスやビジネスの将来性を確実に広げる”というビジョンのもとMakeLeapsを設立しました。良かったらTwitterのフォローもよろしくお願いします。特にMakeLeapsユーザーからのツイートは大歓迎ですので、お気軽にツイートして下さい!

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2件のコメントがあります。

  1. Supernova
    2014年12月03日

    Make Leapsユーザーです。
    いつも利用させていただいております。

    私も先月初めてサンフランシスコに行ったばかりで、ジェイCEOと幾つか同じような印象を抱いていたので、ブログ楽しく読ませていただきました。

    特にUBERとYelpは、街にサービスが浸透していたのと同時に、非常に便利で驚きをもって体験しました。単に便利である以上に、快適さとコストダウンをもたらすこれらのサービスは、一度体験すると元には戻れないと感じました。

    日本のマーケットの可能性のご指摘も、海外出身者ならではの鋭い指摘で、勉強になりました。今後ともご活躍をお祈りいたしております。

  2. Ёсихиса Кимура
    2014年12月04日

    シリコンバレーの人々はMENSANみたいな方ばかりなんですね。楽しそう!