起業したい!MakeLeapsからの起業のススメ

3年前にMakeLeapsを設立してから、日本でスタートアップを軌道に乗せるための過程について多くを学んできました。

これまで起業家が集まるイベントに積極的に参加・企画し、「Startup Weekend」でメンターを務めるなど、スタートアップコミュニティに深く関わってきました。あらゆるスタートアップがマーケットを見つけ、商品やサービスを作り、成長を遂げていく姿を見てきました。

しかし残念ながら、日本国内のスタートアップに関する知識値は英語圏に比べ低いです。シリコンバレーでは一昔から鉄板だという事でさえ日本のスタートアップ界では目新しいことも稀ではありません。

多くのスタートアップ関連の著書が翻訳され、このような状況も改善されつつありますが、似たような間違いを繰り返してしまうスタートアップはまだ少なくはありません。

そこで日本国内で起業を目指す方々に貢献したいと思い、我々の経験談から、日本のスタートアップと異なっているポイントを以下でまとめたいと思います。同じ試練に立ち向かう起業家の皆様に役立つようなガイドラインになれば幸いです。

「痛みのつぼ」を一つ決めて、解決方法を限りましょう。

ビジネスを成功させるため最も確実な方法は、「痛みのつぼ」を定めることです。痛みがひどければひどい程、その解決策を導きだせる可能性は大きくなります。

我々の場合、その痛みは「請求業務」でした。請求業務に伴う痛みは誰しもが感じるものです。請求業務に関して最初から最後まで嫌いだという人も少なくはありません。 入金を確認できない、管理ができないことを嫌う人がいれば、請求書の作成を嫌う人がいます。間違った請求書を誤って送ってしまい、頭を悩ませたことが誰でも一度はあるでしょう。

日本国内の経営者に請求業務について聞いてみると、出てくる言葉は皆一緒でした。「面倒くさい」

これこそが、「痛みのつぼ」です。

自分の場合はどうだろうか?

自社製品やサービスが解決できる痛みについてしっかり考えてみましょう。顧客となりうる人達は今どのようにこの痛みと戦っているのでしょうか。競合他社はどのように解決しようとしているでしょうか。

気づいていようがいまいが、必ずライバルはいるものです。仮に、「競合」と呼ばれる企業が同じ製品を扱っていなくても、痛みの解決プロセスや目的は似ているかもしれません。

我々のプロダクト、MakeLeapsの競合はMicrosoft Excel(エクセル)です。もっと具体的に言うと、エクセルで請求書を作る人たちです。よって、エクセルが生み出す痛みは何なのかを理解する必要があります。この痛みさえ理解できれば、プロダクトの開発やマーケティングをどんどん進めていけます。

焦点を定める

スタートアップやプロジェクトマネジメントで “Don’t try to boil the ocean(海を沸騰させようとするな)”というフレーズがよく使われれます。つまり、プロダクトに1つだけでも非常に優れた機能や特徴をつける方が、どれも大したことのない機能を10つけるより良い訳です。

「完璧なものができるまで、プロダクトを表に出さないにしよう」と考えることは、成功への遠回りでしかありません。

プロダクトが初期段階だとしても、すぐにでもロンチするべきです。今後お客様となっていく人達から生の声を聞き、痛みをどれだけ効果的に解決できるかをいち早く理解することが重要です。

フィードバックをもらい、まだできませんと言えるようになりましょう。

これは痛みと関連してきます。「いいえ、まだできません」というのは辛いものです。それは我々も同じです。

MakeLeapsでは、ユーザーの方々から頂くご要望や意見をまとめたファイルがあります。50ページ以上に渡るリストには我々も日々苦戦していますが、リストの一つ一つを機能として開発し、使ってくださる方々のお役に立ちたいと思っています。

しかしながら、現実的に考えて、全てのユーザーの方々に満足してもらおうとすれば、結局誰も満足させられないモンスターを作ることになります。限られた人々でもプロダクトを愛用してもらえれば、周りの人に紹介してくれるでしょう。その頃には多くの人々が今使っているモンスタープロダクトにうんざりして、シンプルなプロダクトに興味をもってくれるかもしれません。

皮肉なことに、ユーザーの方々のニーズをできるだけ理解するため、フィードバックを促すことが重要であると同時に、フィードバックから集めた全ての要望を実現することは難しいのです。(多くのフィードバックを得るコツについては日本でSaaS販売をするには、外国人CEOの知恵袋をご参照ください。)

自動車の育て親でもあるヘンリー・フォードはこんなことを言っていました。

“If I asked customers what they wanted, they would have said a faster horse.” (もし客に何が欲しいかを聞いたとしたら、もっと早く走れる馬がほしいと言っただろう。)

プロダクトを利用している場合も、そうでない場合でも、お客様が何に苦しんでいるのか、何を求めているのか理解しなければならりません。こういった情報や思考が頭にあれば、お客様の痛みや苦しみを解決するより効果的な方法を導きだすことができるはずです。

おまけ

機能やサービスのリリース時期を絶対に約束してはいけません。「明日にはできますよ!」と言いたくなるでしょう、しかし、決してそう言ってはいけません。何か予期せぬ事態が起こり、リリースに準備が間に合わない場合もあります。

例えば、開発したソフトウェアにバグが見つかり、全ての作業を止めて、100%の時間と労力を注がなければならない状況になるかもしれない。あるいは、2週間かけて120%以上の時間をとられてしまうような大きなチャンスが、突然舞い降りてくるかもしれません。誰かがサービスの利用を停止したり、開始したり。ある日、大きなお客様からお問い合わせを受けるかもしれません。 重要なお客様が利用を断念するかもしれません。 数えきれない事態がリリースを妨げる可能性を秘めていることを忘れてはいけません。

だからこそ、(残念ながら)このように伝えるしかないのです。

“お問い合わせ頂き誠にありがとうございます。弊社のサービスに興味を持っていただき光栄に存じます。この機能(サービス)がお客様にとって非常に重要であることが十分に承知しておりますので、リリースのため開発を検討しております。できるだけ早くリリースできますよう、チーム一同尽力しておりますが、リリース時期をお約束しかねますことをご了承くださいませ。アップデートがございましたら、再度ご連絡申し上げますので、今しばらくお待ちいただけますでしょうか。”

お客様を愛しましょう。

まだ知名度の低い、新しいプロダクトを貴重な時間を割いて利用し、不愉快な経験をした人達は大型トラックにでも跳ねられたような気分になるでしょう。満足頂けなかったお客様はいち早く見つけだし、丁寧に謝罪し、満足して頂くべく何でもやるべきです。

当然のことながら、お客様はスタートアップする企業にとって最も大事なのですから、宝物のように大切にしましょう。お客様は自身の抱えている問題を解決してくれるだろうと、スタートアップとその能力を信頼してくれています。全力でその期待と信頼に答えなければなりません。

つまり

  • あなたのスタートアップ企業について人々がどのように感じているのかを知るためにはソーシャルメディアに目を向けることが効果的です。
    • Topsy はオススメです。毎日、投稿をリアルタイムで検索してくれます。
    • ブランド名(サービス名や企業名)をGoogleで検索します。1日おき、1週間おきの検索が調度良いでしょう。

    • ブランド名をTwitterで検索するのも生の声を聞くには良いです。
    • Facebookで検索するのもよいでしょう。もちろん”公開”に設定されている投稿のみ表示されます。
  • ドメインのインカミングリンクをトラックすると、執筆されたレビューや記事、ブログ投稿など最新のものが確認できます。
  • カスタマーサポートのパフォーマンスが常に素晴らしいことも重要です。カスタマーサポートはマーケティングの延長線です。
  • アプリケーションストアのプロダクト評価やレビューを監視するのも良いでしょう。
  • プロダクトを使ったお客様に不快な経験をさせてしまった場合、必ず正しい対応をしましょう。成長するにつれてより多くのお客様を得ることができますが、同時に特定のユーザーにとっては望ましくない状況がどうしても出てきます。こういった状況にどのように対処するかは、スタートアップにとって極めて重要になります。

簡単に言えば、お客様を好きになろうということです。

ハッスルを持つ。

日本でよく見られる共通の間違いは、ひとつのプロダクトのために一生懸命働く一方、営業(マーケティング)サイドを疎かにすることです。

スタートアップを始めるのに適している人達は次の通りだと言われます。

  • プログラマー
  • デザイナー
  • ハスラー

しかしながら、日本においてはハスラーの役割を担う人を抜きにしたプログラマー2人、あるいはプログラマー1人とデザイナー1人、というスタートアップが多く存在します。

これは残念なことです。というのもハッスルのDNAを持つスタートアップは、ハッスルがない企業に比べ、はるかに良いプロダクトを作り出せるからです。

ハッスルとは何でしょう?

ハッスルはハッキングにとてもよく似ています。ハッキングがシステムを上手く操作し、望ましい結果を出す能力であるのなら、ハッスルは営業やマーケティングにおけるハッキング能力だと言えます。

良いハッキングは厚かましく、同様に良いハッスルも厚かましいものです。始めたばかりのスタートアップで、プログラマーが営業やマーケティング担当に対してイライラしていれば、おそらく開発と営業の良いバランスが取れているでしょう。

起業したてのスタートアップで働いていれば、おそらくはこれまで市場になかった、成功したことのないプロダクトやコンセプトを売ることになるでしょう。つまり、できることは全てやり尽くし、上手くいったことにより多くの時間とお金を投資する、これを繰り返すしかありません。メンバー1人でも営業に重点的に取り組んでいないのであれば、成長スピードは遅くなり、おそらく決して転機を迎えることはないでしょう。

営業やマーケティングに優れ、ソフトウェアを十分に理解している良いハスラーを見つけることができれば、何をしてでもつかまえてください。あいにく、こういった人材は極端に少なく、見つけてつかまえておくのが難しいものです。

ハスラーを見つけられなければ、チームの誰かに営業の役割を担うように働きかけましょう。エンジニアリングと営業の両方を理解していれば、ソフトウェアのスタートアップとして非常に力強い戦力になります。いわゆる、グロースハッカー(Growth Hacker)と呼ばれる人を作ることです。

マーケットを理解する。

潜在顧客となる方々の試練や苦しみ、性格、環境を詳細に説明できますか?

少しでも言葉に詰まるのであれば、もっとお客様になりうる人達と話す必要があります。ここに多くの起業家(特に開発者)がひっかかる落とし穴があります。実際にソフトウェアを使うお客様よりも、プロダクトや機能、バックエンドに集中してしまいがちです。

1、2社に話すだけでは不十分です。30社、50社、80社でも、できるだけ多くのお客様と話すことが重要です。

1行目のコードを書き始める前から、お客様と話すことが理想的です。

唯一の例外は、自身の人生や経営生活で同じような問題に直面したことがある場合です。そういった場合も、数十人のお客様と面談し、似たような悩みを抱えているかどうか確認することが重要です。

大抵、人は自分と同じような経験を周りの人もしているだろうと考えがちです。 これは大きな落とし穴です。他人は自分と同じ人生を送っている訳ではありません。自分にとって重大な問題だと思われることも、他人には大したことではないかもしれません。考えついた解決策は全ての問題を解決できないかもしれません。利用料を払ってまで、プロダクトを使ってくれないかもしれません。

家、オフィス、インキュベーターを飛び出し、今すぐお客様に話しに行きましょう!

現時点でお客様が見つけられないならば、プロダクトが出来ても誰にも営業することはできません。

いつでもお客様を見つけ、話す癖をつけるといいでしょう。

“悲しみの谷”に負けてはいけません。

悲しみの谷(The trough of sorrow)はY Combinator創始者のポール・グラハムによって有名になった概念です。最初のTechcrunch記事の掲載後、スポットライトは薄れ、50,000人の訪問者も40のサインアップへ減り、5人のアクティブユーザー、有料ユーザーは0になってしまったことがありました。

何もしないで座り、呆然としてどうしてこうなったのか理解できない状態です。トラフィックはすっかりなくなり、ユーザーとの交流も少ない。”The trough of sorrow”とはそういった深刻な問題で、どこから始めてよいか分からなくなる状況を言います。ウェブサイトのコピー?マーケティング?アプリケーション?新しいインターフェース?新機能?機能の削除?機能の改善?広告投資?広告投資を辞めたこと?じたばたするのは簡単です。

これはよくあることで、誰もが経験することです。そう分かっていても、辛いものです。プロダクトの開発に全身全霊を捧げて、誰も気にとめてくれないと思うでしょう。

困難を乗り切るために費やした時間には、壁をじっと見つめる時間も含まれています。しかし、共同創設者がいれば(可能であればいた方が良いです)、会社の将来や優先順位など難しくも非常に重要なことを話し合うモチベーションになります。

我々の場合、ベータ版をローンチして2,3ヶ月後に5人のセミアクティブユーザーしかいなかった時、悲しみの谷(trough of sorrow)を経験していました。この時、かなりのストレスでイライラしていました。ああだったらどうしよう、こうだったらどうしよう、という仮説にうなされました。

たとえば、

  • 日本企業はオンライン請求書サービスを決して使わないのだろうか?
  • 請求書は他社の信頼やビジネスマナーに関わるため、他社の請求業務サービスを使うことはないのだろうか?日本文化が請求業務を不変にしているのではないか。
  • 目玉機能であった、社印をアップロードして請求書や見積書に記載する機能は、誰も実際にアップロードしないから意味がないのだろうか?
  • マーケティングが駄目なのか?
  • アプリケーションは駄目なのか?
  • このサービスは一生うまく行かないのだろうか?

希望を見失い、悲観的になることは簡単です。しかしながら、前進させてくれる言葉や統計があります。

地獄を経験したなら、前進あるのみだ。(If you’re going through hell, keep going.)

ウィンストン・チャーチル

スタートアップのプロセスを描いた典型的なグラフがあります。

エリック・リーの著書、 The Lean Startupによると、このプロセスで最も大変な決断は、ビジネスを枢軸に置き、辛い時期を乗り切ったかどうかです。この決断は、より多くの顧客を得て、ターゲットの市場を十分に理解していればより簡単になります。

我々は耐え忍び、競合他社の事業を譲受し、数百のマーケティングを試しました。そして、いまやMakeLeapsを使う企業は数千社以上にも上ります。

以下が、見積書・請求書の発行業務のためにMakeLeapsに登録した企業の伸びです。

どんなに辛くても、必ず光が見えてきます。辛抱しましょう。

結論

日本国内でスタートアップを立ち上げるのは、微妙な立ち位置であります。

スタートアップも関する情報は多くなく、社会的な支援もあまり期待できません。それどころか否定的に捉えられ、「ちゃんとした仕事」に就いた方が良いと勧められることすらあります。

日本のモノ作りの文化とモノ作りへの尊敬の念を考えると、この点は非常に残念です。今日の有名な大企業の多くも、中小企業として創業し成長していったと考えればなおさらです。しかし、幸い状況は変わりつつあります。

国内でも、起業に関する書籍や情報が手に入りやすくになりました。

Startup Weekend の知名度が上がり、スタートアップも注目されつつあります。

コワーキングスペースも急速的に開業し始め、創業者たちに活動の場を与えてくれます。

より多くのスタートアップ・アクセラレータ が創設され、起業家たちにサポートと資金、そして成功になによりも必要なメンターシップを提供しています。

多くの起業家たちを強く結びつけるコミュニティーイベントが増えています。MakeLeapsHacker News Tokyoのイベントを主催し、50名から80名の起業家、プログラマー、出資家、デザイナー、ハッスラーなどが参加しております。

今後も、助け合えるようなスタートアップ・コミュニティーの形成に貢献し、スタートアップは大企業に成長できるような現実的な選択肢であるとことを証明していきたいと思います。より豊富なノウハウを蓄積し、成功するスタートアップを日本国内でも増やしていきましょう。

最終的な目標は優れた起業家や企業、メンター、投資家が活発なスタートアップのエコシステムを形成し、国内企業を導くことで日本の国際競争力を高め、活力ある日本経済を作り上げることです。

さあ、皆さん邁進し続けましょう。

Jay Winder

Jay Winderはオーストラリア人のMakeLeaps共同設立者です。武道を学ぶため2001年に来日し、2003年にWebnetITというITコンサルティングのビジネスを立ち上げ、2010年には”日本国内のフリーランスやビジネスの将来性を確実に広げる”というビジョンのもとMakeLeapsを設立しました。良かったらTwitterのフォローもよろしくお願いします。特にMakeLeapsユーザーからのツイートは大歓迎ですので、お気軽にツイートして下さい!

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コメント(1)

  1. Douglas Mak
    2013年09月01日

    Great article! When you were in the trough of sorrow, what was the main point of validation for you to keep walking through hell instead of pivoting?