Webサービスを日本でスタートアップするには

この記事はBeacon Reportsから許可を頂いたため、掲載致します。



起業を考えている方にとって、ジェイソン・ウィンダーの新しいベンチャー、MakeLeapsの生い立ちを知れば、興味深く、刺激的な学びを得られるでしょう。ジェイソンは、2001年に初めて日本に訪れました。日本語はほとんど話せませんでしたが強い情熱と集中力、そして信念によって、ジェイソンは現在二つ目のベンチャーを率いるまでになりました。

来日後すぐに、ジェイソンはITコンサルティング会社で働き始めました。クライアントが単独の契約を彼と結びたいとの申し出を受けたときには、これをすぐに承諾。そうして設立したジェイソンの新しいITサービスの会社は、口コミでクライアントが増えるにつれ更なる成長を遂げていきました。また、クライアントの数の増加に伴い、新たな従業員も雇い始めました。 「一生懸命働き、素早く新しいことを学んでいかなければなりませんでした。」とジェイソンは言います。しかし、やっと軌道に乗り始めたという時に、大変な苦労をすることになりました。これまで全く気にかけてこなかった交渉やセールス、契約、会計、人事といった領域における、ビジネスの基本を全て学ばなければならなかったのです。同時に、日本語も習得しなければなりませんでした。こうした創業当初の経験が、ジェイソンにとっての総合的なビジネス教育となりました。それは必要から生まれた学びでした。

その後、会社の規模は拡大し、2005年には毎月20〜30通の請求書を発行していました。あまり多くはないと思われるかもしれませんが、請求書の一つ一つを発行するためには、多くのタイムシートを管理する必要があったのです。ジェイソンは、事務的な作業に追われるようになります。 「3人で取りかかっても、1ヶ月分の請求書を発行するのに1週間もかかりました」と彼は言います。請求書を自動化するアイディアを考えついたのはその時でした。

ジェイソンが数年かけて開発したシステムは、エレガントなものではなかったものの、たった1人の従業員が15分間で1ヶ月分の請求書を発行できるまでに改善されました。ジェイソンは身を以て経験した苦労から、自ら解決方法を生み出したのです。同時に、他の中小企業の経営者の重荷も同じように軽減できると確信しました。

そこで、作り上げたソフトウェアを「ここをクリックすると、請求書を発行できます。それからこっちをクリックすると、レポートを表示できます」と、知人に紹介しました。しかし、知人から「これはすごいですね。いくらで使えますか?」と訊ねられると、
「売りには出していないんです」とジェイソンは返答するしかありませんでした。

また、別の知人に同じソフトを見せました。知人から「これはまさに私の会社に必要なものですよ」と言われても、やはり「売りには出していないんです」と返事をしました。しかし、知人は言葉を強くします。「どうしてですか。これは絶対に私の会社に必要なものなんです。」 この時点で、ジェイソンがどうするべきかは明らかでした。

こうしてジェイソンは最初のクライアントを獲得しましたが、すぐに製品を提供することはできませんでした。そのソフトはジェイソン自身のためだけに開発されたものだったからです。具体的な機能や動作を指針として開発されたわけではありませんでしたし、最初から1つの会社のためだけに作られたものでした。他の会社にも使ってもらうためには、システム全体を、もっと安定した基盤の上に最初から作り直さなければいけませんでした。

ちょうどそのころ、ポール・オズワルドと出会いました。それは今から考えると、幸運なできごとでした。ポールはちょうど、ソフトウェアの開発者として働いていたニューヨークのSony Music Entertainmentを退職し、来日していた頃でした。二人はすぐに意気投合し、クラウドベースの請求書管理サービス、MakeLeapsを共同創設しました。

彼が100%株を所有していた最初のベンチャーが、新しいアイディアを現実にするための経済的な礎となりました。会社のキャッシュ・フローは良好で、借金はゼロ、スタッフは8人いました。

それでも、ジェイソンとポールには気がかりなことがありました。海外の会社の間では、すでにオンラインの請求書管理サービスは人気でした。しかし、日本国内ではインターネット上で請求書を管理していた会社はほとんどなかったのです。もしかしたら、日本の従来のやり方や慣習には合わない方法だったのかもしれません。投資家に起業のアイデアを説明すると「アイディアはいいですね。競合相手は誰ですか?」とよく聞かれます。しかし、突出した競合相手は見当たりませんでした。このような状況は通常、赤信号のようなものです。それは十分な市場が存在していないことを示唆するからです。

ジェイソンとポールは、製品の開発に取りかかる以前に、まず最初にクライアントの意見を聞かなければならないと考えました。どんな問題を抱えているかを明らかにし、どんな機能が求められているかを突き止め、本当に需要があるということを自信を持って断言できる必要がありました。ピーター・ドラッカーはこう言いました。

There is nothing quite so useless, as doing with great efficiency, something that should not be done at all.
最も役に立たないことは、最初からすべきでないことを効率よく処理することだ。

ジェイソンは全く必要のないものを作り上げることだけは避けたかったのです。そうしない限りは、彼の言葉を借りれば、開発者のジレンマに陥ることになります。何百万、何千万円というお金を使い、何ヶ月や何年という時間を費やしたあげく、自分にとっては完璧でも他の人にとっては全く使い物にならないものを作り上げてしまう恐れがあるのです。もしそうなれば、会社は倒産してしまいます。

できるだけ多くのクライアントに試しに使ってもらうために、ジェイソンとポールは実用最小限の製品を開発することにしました。そして、本当に必要な機能だけを一つずつ追加することにしたのです。最初に興味を持ってくれそうな人に、できたばかりのMakeLeapsを持っていき、「これは最初のバージョンですが、試しにご利用いただけますか?」と尋ねました。
「いいですよ」とクライアントは承諾しました。クライアントは【請求書を作成】ボタンを押して、しばらく待ちました。永遠と思えるほど長い間待った後、クライアントは言いました。 「便利だけれど、遅すぎますね。実際に使うことはないと思います。」

MakeLeapsのチームはオフィスに戻り、アプリケーションが速く動作するようにしました。そしてまた同じクライアントの元に持っていきました。 「確かに速いですが、請求書に会社の判子が入っていませんね」とクライアントは言いました。 「本当に必要なんですか」と尋ねたところ、クライアントは頷きました。

またオフィスに戻り、今度は判子を追加しました。再びクライアントのところに持っていくと、今度はこう言われました。
「そうですね、確かに速いですし、判子もあります。でも、会社のロゴが入っていません」

フラストレーションに悩まされながらも、ジェイソンは揺るがない意思を持ち続けました。MakeLeapsチームがロゴを追加し、クライアントにまたソフトを持っていきました。三回目のことでした。「今度はどうですか」ジェイソンは尋ねました。「確かに速いですし、判子もあり、ロゴもついています。でも・・・このレイアウトでは使うことは出来ないんですか。」

ジェイソンは一瞬考えました。見積書や請求書のレイアウトをかえられるようなシステムを開発するためには、数ヶ月といった期間がかかってしまいます。その上、たった一人のユーザーがある機能を必要不可欠だと考えたとしても、市場全体の99%の人たちにとって実は必要のないものなのかもしれません。ジェイソンは歯を食いしばりこう答えました。 「申し訳ありませんが、今すぐにレイアウトを変えることはできません。それでも使って頂けますか?」 クライアントは少し考え、「そうですね。使ってみましょう」と答えました。

このようにして、MakeLeapsは最初の有料ユーザーを獲得したのです。

ジェイソンが他の人にソフトを使ってもらったところ、すぐにまた壁にぶつかりました。多くの利用者が「とても便利な製品ですね。値段も悪くありません。でも、他に使っている人はいるのでしょうか?」と聞いてきたのです。コンセンサスによって意見を形成されていくことの多い日本では、知り合いが同じことをしていないかぎり、何か新しいことを取り入れることに躊躇しがちです。ジェイソンはまさに鶏と卵のような問題に直面したのです。利用者が足踏みをしたのも、無理はありませんでした。MakeLeapsは彼らにとって全く未知のサービスだったからです。明日になればもう使えなくなっている、と考える人もいました。

ジェイソンは大きな壁に直面しました。技術的な問題を解決できることは証明できましたが、今回はそれだけでは十分ではありませんでした。ジェイソンもポールもマーケティングの問題を解決することはできなかったのです。長い間、解決方法を見つけようと必死に考えを巡らせました。

ある日、ジェイソンは会計用のソフトウェアについて調べていました。日本で最も人気があったのは弥生会計という製品でした。客観的に考えても高価で、使い勝手が良いは思えませんでした。経営者のほとんどが、弥生会計についてどう思うか訊ねられたときには「使い方を覚えるのに何週間もかかるし、使いづらいですよ」と答えました。そこで、ジェイソンはさらに尋ねました。「どうして弥生会計を買うことにしたんですか?」返ってきた答えは「会計士にそう言われたからですよ」というものでした。ジェイソンがあることについて閃いたのはこの時でした。

会計士の多くは、請求書のデータを弥生会計に入力するために大量の時間を費やします。大規模な会社にいたっては、何十時間から何百時間という時間を消費ことさえもあります。ジェイソンにとっては、それは到底理解できないことでした。会計士の顧客は、請求書を作成・送信する必要がありました。そこで、MakeLeapsからのデータを自動的に弥生会計にエクポートするというアイデアを、ジェイソンは考え出しました。そこである会計士に接触し、尋ねました。「もしデータ入力のような単純作業を、代わりに顧客に処理してもらうことができたらどう思いますか? さらに、顧客がMakeLeapsに登録する度に弊社からコミッション(斡旋料)をお支払いしたらどうでしょうか。何百時間もかかるようなつまらない仕事を削減しつつ、新たな収入も入ることになります。試してみませんか。」

会計士の出した答えは、「イエス」に他なりませんでした。

どうやって会計士にMakeLeapsを売り込むかを明らかにした後は、新しいユーザーの獲得は容易になります。会計士のアドバイスに従わない人は誰もいなかったのです。その結果、今日では日本国内で数千社がMakeLeapsを使用しています。

情熱と集中力、そして信念を持ったジェイソンは、まさにIchiban起業家です。MakeLeapsで達成したことについて、ジェイソンは「ソフトウェアの開発者にとって最も嬉しいことは、自らが生み出した製品を使っている人を見ることです」と言います。「私自身、チームが作り上げた製品を、ユーザーの方に愛用して頂くことに大きな喜びを感じます。今まで経験したことのない満足感や充足感に満ちあふれたもので、すごく楽しいです。」

MakeLeaps

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